第6章 【第五話】存在を繋ぐ歌
そこには、記録者の冷静さが残っている。
けれど、その奥に、確かな熱があった。
「オレは、この村で何が起きたかを記録する」
ラビの声は、掠れているのに揺らがなかった。
「消えた人間のことも。縛られてた魂のことも。あんたが、あの人たちを苦しみから解放したことも」
アンナが、小さく嗚咽を漏らす。
ラビの視線が、彼女へ落ちる。
「それから、この子が母親を呼んでたことも。全部、なかったことにはさせねぇ」
胸の奥へ、温かな痛みが広がった。
慰めではない。
失われた母親が戻るわけでもない。
アンナの記憶が戻る保証もない。
それでも、ラビの言葉は、崩れそうな足元へ僅かな地面を残してくれた。
「……ありがとう」
声を絞り出す。
ラビは一瞬だけ、目を逸らした。
「別に。オレは見たまま記録するだけさ」
軽い言い方だった。
けれど、その指は、肩から離れなかった。