第6章 【第五話】存在を繋ぐ歌
「だが、これは逆だ」
ブックマンの声が、さらに沈む。
「送らず。解放せず。終わらせず。死者の魂を、魂のまま現世へ縫い留め続けようとしておる」
背筋に、冷たいものが走った。
「そんなことをしたら……」
「魂は耐えきれず崩れる。さらに、死者へ結びつく生者の記憶や存在まで巻き込み、喰らっていく。母を求めていたあの少女が呑まれかけたのも、そのためだろう」
私は、周囲を見渡した。
名前の消えた墓標。
開け放たれた家々。
顔を失った肖像画。
誰かが暮らしていたはずなのに、誰だったのかさえ思い出せない村。
これが、失敗した結果なのだ。
死者を失いたくないという欲望のために、生きていた者たちまで消された。
「……どうして……」
喉から、掠れた声が零れる。
「どうして、そんなことを……」
ブックマンはすぐには答えなかった。
ただ、焼け焦げた紋様の一部を、静かに紙へ写し取っていく。
「……失った者を、手放せぬ者がいる」
やがて落ちた声は、風に消えそうなほど低かった。
「死を終わりとして受け入れられぬ者は、時に救いよりも残酷な手段へ縋る」
胸の奥へ、鋭い痛みが刺さる。
母を失った時の自分。
アレンが、マナを失った夜に零した涙。
もし、あの時。
失った大切な人をこの世界へ留められる方法があると囁かれていたら。