第6章 【第五話】存在を繋ぐ歌
「違う」
ラビの声が、思ったより強く落ちた。
私は顔を上げる。
彼は血の滲んだ頬のまま、静かにこちらを見ていた。
「進むって決めたのは、最後はオレたちだ。ティファだけのせいにすんな」
「でも……」
「それに」
ラビの視線が、眠る少女へ向く。
「助かっただろ。あの子」
胸の奥が震える。
私は少女へ視線を移した。
泥に汚れた布人形を胸の傍へ置かれ、小さな呼吸を続けている。
その身体は、もう霧に溶けかけてはいない。
触れれば、きっと温かい。
「……ええ」
声が詰まる。
「救えたわ……」
小さく呟く。
けれど、その瞬間、光の中へ消えていった女性の輪郭が脳裏に蘇った。
あの子の母親。
私は、彼女を苦しみから解放した。
あるべき場所へ送った。
それでも、生きている少女から母を遠ざけたのも、自分の歌だった。
「でも……お母さんを、送ったのは私よ」
ラビの表情から、僅かに笑みが消えた。
私は眠る少女の傍へ膝をつき、落ちていた布人形をそっと拾い上げる。
「この子は、きっとお母さんを求めていた。傍にいてほしかったはずなのに……私は」
「違ぇだろ」
低い声が、遮った。
ラビは傷の痛みを堪えるように息を吐き、私の隣へ膝をついた。
「ティファが送らなかったら、あの母親はずっと苦しんだままだった。あの子だって、巻き込まれて消えてた」