第6章 【第五話】存在を繋ぐ歌
私は石畳の上へ膝をついた。
荒い呼吸が、喉を焼く。
胸が上下するたび、擦り切れたような痛みが身体の奥へ響いた。
目の前では、少女がラビの腕の中で静かに横たわっている。
黒い霧は、もう彼女へ触れていない。
小さな胸が、弱々しく上下している。
生きている。
「……よかった……」
声が、掠れた。
けれど、胸の奥へ安堵が満ちきるより先に、視界の端へ赤いものが映る。
ラビの頬から、血が流れていた。
肩口の団服は裂け、腕にも深い傷が走っている。
「ラビ……!」
私は咄嗟に立ち上がろうとした。
足に力が入らず、よろめきながら彼の傍へ近付く。
ラビは少女を静かに石畳へ横たえると、槌を支えにして身体を起こした。
「怪我が……」
震える手を伸ばす。
けれど、触れていいのか分からず、寸前で止まった。
ラビはそんな私の手を見て、かすれた声で笑った。
「……へへ。大したことねぇさ」
「大したことない傷には見えないわ」
「初任務の女の子の前で格好つけるくらい、許してくれてもよくね?」
いつもの軽口に近い。
けれど、声は疲れきっている。
私は唇を噛んだ。
「私が、無理を言ったから……」