第6章 【第五話】存在を繋ぐ歌
「少女は余波に巻き込まれておる! 死者を縛る糸を断たねば、生きた者まで消失へ引きずられるぞ!」
意味を理解した瞬間、背筋が凍った。
誰かが、この村で死者の魂を留めようとした。
死を終わりにしないために。
失った者を、この世から手放さないために。
けれど、その試みは失敗した。
縛られた死者の魂は崩れ、その歪みが生きた者の記憶と存在へまで侵食した。
死者を残そうとした術が、村全体を消し去ろうとしている。
何のために。
誰が、こんなことを。
考える暇はなかった。
霧の腕が、結界を突き破ろうと殺到する。
「 ティファ、集中しろ!」
ラビが私の前へ飛び出した。
大槌小槌が巨大化し、黒い霧の塊へ叩きつけられる。
鈍い衝撃音。
霧が砕け、一瞬だけ道が開く。
けれど、散った黒はすぐに集まり、再び刃のような形を作ってラビへ襲いかかった。
「ラビ!」
「こっちは気にすんな!」
彼が叫ぶ。
いつもの軽い笑みは、もう欠片も残っていない。
ただ、こちらへ一歩も近付けさせまいと、何度も槌を振るっている。
霧の刃が頬を掠めた。
赤い血が空中へ散る。
団服の袖も裂け、腕へ鮮やかな赤が滲んだ。
それでも、ラビは退かなかった。