第6章 【第五話】存在を繋ぐ歌
「……いいな?」
私は静かに頷いた。
「ええ」
ブックマンが長い溜息を吐く。
「止めても行く顔をしておるのう」
「……申し訳ありません」
「謝るくらいなら、必ず戻れ。死者を送る者まで、死者に引かれて消えては話にならん」
その言葉に、私はもう一度頷いた。
喉の奥へ意識を沈める。
ニルヴァーナが、白い熱を返した。
私は短い旋律を紡ぎ、両手を開く。
「――イノセンス、発動」
白銀の光が胸元から溢れ、腕を伝って両手へ集まる。
細く、鋭い刃の輪郭。
二振りのレイピアが、霧の中へ静かに姿を現した。
ラビが大槌小槌を構える。
ブックマンは腰元の針入れから黒い針を抜き取った。
霧の奥で、歪んだ歌が強まる。
還れない死者たちが、救いを求めて声を重ねるように。
私は一歩、踏み出した。