第6章 【第五話】存在を繋ぐ歌
本当は、怖かった。
初めての任務で、何が起きているのかも分からない異常へ踏み込むことが。
自分の歌が届かなかった時に、苦しみ続ける魂の声を聞きながら、何もできずに立ち尽くすことが。
それでも。
「それでも、何もしないまま終われない声を置いていくなんて……できない」
ラビは、何も言わなかった。
翠の瞳が、私の顔を静かに見つめている。
記録者のような冷たさが、まだ残っている。
けれど、その奥で、何かが揺れたように見えた。
私は、声を落とした。
「……私を信じて、ラビ」
その瞬間、ラビの指先が僅かに動いた。
ほんの一拍。
表情から、すべての軽さが消える。
まるで、下すべき判断と、目の前に立つ私へ向ける感情とが、初めて同じ場所でぶつかったように。
やがて、ラビは深く息を吐いた。
「……ったく」
バンダナの端へ指をかけ、苦く笑う。
「来たばっかの新人が、そんな顔で頼むなよ。断りづれぇだろ」
「ラビ……」
「勘違いすんなよ。無茶を認めたわけじゃねぇ」
ラビは私の前へ一歩出た。
「進むなら、オレたちの指示に従え。死者の声に引っ張られて、あんたまで戻れなくなりそうなら……何が聞こえてようが、力ずくでも連れて帰る」
低い声だった。
冗談でも、口説き文句でもない。