第6章 【第五話】存在を繋ぐ歌
その翠の瞳が、こちらへ向く。
「一度戻って、本部へ報告するべきだ。少なくとも、今すぐティファが突っ込むのは危なすぎる」
正しい判断だと思った。
教団の一員としても。
任務の同行者としても。
何が起きているのか分からない以上、無謀に踏み込むべきではない。
けれど。
霧の奥から届く歪んだ歌に混じって、細い声が震えた。
――おかあ、さん。
胸の奥が、強く締め付けられる。
生きた少女が、死者の歌の中で母を呼んでいる。
そして、その母親の魂は。
きっと今も、この村のどこかへ縛られ、還ることさえ許されずにいる。
私は団服の胸元を握り締めた。
この力を持っているから、私はここへ来た。
苦しみながら縛られている魂と、まだ生きている声を聞きながら、危険だからと背を向けるためではない。
「……分かってる」
私はラビを見る。
「危険なのも、罠かもしれないことも分かってる」
「なら――」
「でも、聞こえてしまったの」
声が、わずかに震えた。
「還りたいのに、還れない魂がいる。その中に、まだ生きている子まで取り残されている」
ラビの眉が、僅かに寄る。
「ティファ」
「私の歌で、全部を救えるかどうかは分からない」