第6章 【第五話】存在を繋ぐ歌
ブックマンの目が、鋭く細められた。
「……ティファ嬢。生きた者の声は聞こえるか」
問いかけられて、私は息を止める。
苦痛に満ちた死者たちの歌の中へ、意識を沈める。
いくつもの声。
名前を失い、形を失い、それでも終われずに縛られている魂の残響。
その奥に。
ほんの僅かに、違う音があった。
弱く、細く、今にも掻き消されそうな声。
「……いる」
私は一歩、霧の中へ足を踏み出しかけた。
「まだ、生きている人がいる。子供……たぶん、女の子……」
その前へ、ブックマンの手が突き出された。
「待て」
短い声だった。
「不用意に進むでない。死者の声がこれほど重なって聞こえるなら、村全体が何らかの術の影響下にある可能性が高い」
「でも、このままでは――」
「聞こえるからこそ危険なのだ」
ブックマンの声が低くなる。
「お主の歌へ届くよう、わざと残されておる可能性もある」
息を呑む。
隣で、ラビが霧の奥を睨んでいた。
先ほどまでの軽い笑みは、もうどこにもない。
「じじいの言う通りさ」
ラビの声は静かだった。
「この村は、建物も名前も、人がいた痕跡まで薄れてる。死んだ奴らを縛ってるものが、生き残った人間まで巻き込んでるなら……近付けば、ティファも同じように呑まれる」