第6章 【第五話】存在を繋ぐ歌
「……こんなことが」
声を漏らした、その時だった。
遠くで、鐘が鳴った。
鈍く、ひび割れた音。
一度。
二度。
村の奥にある教会の方角から響いたはずなのに、音は空気を伝わるのではなく、直接、喉の奥へ沈み込んできた。
ニルヴァーナが、大きく脈打つ。
「……っ」
焼けるような熱に、私は反射的に喉元へ手を添えた。
「ティファ?」
ラビの声が近くで響く。
けれど、それへ答えるより先に、何かが耳の奥へ届いた。
歌。
いや、歌と呼ぶにはあまりに不完全なもの。
音は途切れ、引き裂かれ、いくつもの苦痛に塗れた声が絡み合いながら、霧の奥で揺れている。
母から教わった、魂を天へ導く旋律と似ていた。
けれど、向きが違う。
母の歌が、死者を苦しみから解き放ち、あるべき場所へ還すものなら。
これは、還ろうとする魂を無理やり引き止め、冷たい地上へ縫いつけ続ける音だった。
「……聞こえる」
自分でも気付かないうちに、声が零れた。
「何が聞こえる?」
ラビが尋ねる。
私は霧の奥を見つめた。
「歌……。でも、救済の歌じゃない」
喉の奥が焼けるように熱い。
「誰かが、死者を還さないようにしている。終わるはずの魂を……この場所へ縛りつけている」