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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第2章 【第一話】雪に残る歌


私は震える手で、母の灰を集めた。

すべてを拾い集めることなどできない。

風にさらわれ、雪に混じり、指の間から零れていく。

それが苦しくて、何度も涙が溢れた。

クロスは黙って、雪の下の土を掘った。

母の灰と、彼女が身につけていた布の切れ端を、そこへ静かに納める。

髪紐だけは、どうしても手放せなかった。

私が握り締めたままでいると、クロスは何も言わなかった。

白い雪の中に、小さな墓ができた。

墓標と呼ぶにはあまりにも簡素な、一本の枝だけが立てられている。

私はその前に膝をついた。

「……お母さん……」

呼びかけても、返事はない。

分かっている。

それでも、何度も呼びたかった。

もう二度と聞けない声を、追いかけるように。

クロスは暫く黙って立っていた。

そして、私がようやく顔を上げた時、背を向ける。

「選べ」

「……え……?」

「ここで母親と一緒に凍えて死ぬか、生きるために俺について来るかだ」

あまりにも冷たい言葉だった。

母を失ったばかりの私へ、手を差し伸べる言葉ではないように思えた。

けれど、不思議だった。

その言葉には、慰めも同情もなかったからこそ、嘘がなかった。

生きるなら、自分で立て。

そう言われているのだと分かった。

私はもう一度、母の墓を振り返る。

降り続く雪が、少しずつ私たちの足跡を消していく。

ここに残れば、母の近くにいられる。

けれど、それは母が最後に望んだことではない。

――あなたは、生きて。

その声が、胸の奥で響いた。

私は母の髪紐を、ぎゅっと握り締める。

そして、震える足で立ち上がった。

「……待って……」

掠れた声で呟き、クロスの背中を追う。

彼は振り返らなかった。

それでも、歩調だけがほんの僅かに緩んだ気がした。

それが、私とクロス・マリアンとの旅の始まりだった。
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