第5章 【第四話】黒衣に宿る祈り
「ありがとう。想像していたより、ずっと軽いの」
私は肩を軽く回し、それから片脚を僅かに引いて、裾の動きを確かめる。
長い布は柔らかく揺れるだけで、足へ絡まなかった。
「喉も苦しくないわ。これなら、歌う時にも支障はなさそう」
その言葉を聞いた途端、ジョニーが大きく安堵の息を吐いた。
「よかった……!そこが一番心配だったんだ。喉に宿るイノセンスなら、服のせいで声を妨げるなんて絶対に駄目だと思って」
「本当に、よく考えてくれたのね」
私はジョニーへ向き直り、微笑んだ。
「ありがとう。大切に着るわ」
ジョニーは少し照れたように眼鏡の位置を直す。
「う、うん。でも、破れたり汚れたりしたら遠慮なく持ってきて。団服は戦うためのものだから、傷つくのは当たり前だし」
戦うためのもの。
その言葉に、私はそっと袖口へ指を添えた。
美しく仕立てられていても、いつか血や泥で汚れる日が来る。
破れる日もあるだろう。
それでも、この服で帰ってくる。
そのための団服だ。
「……そうね」
私は小さく頷いた。
「この服で、ちゃんと戻ってこられるようにするわ」
リナリーの表情が、ほんの少しだけ柔らかくなる。
「うん。必ず、戻ってきてね」
その時だった。
区画の入口から、軽い口笛が聞こえた。
「おわっ、ストライク!」
聞き覚えのある声に、私は振り返る。
ラビが、片手に本を抱えたまま柱へ肩を預けて立っていた。
「期待以上さ。ティファ、その団服、めちゃくちゃ似合ってる」
軽い足取りで、こちらへ近付いてくる。