第5章 【第四話】黒衣に宿る祈り
腰へ重なる黒と銀の細いベルトを留めると、身体の芯がまっすぐ定まったような感覚がした。
腰から落ちる長い布地は、正面を大きく開き、左右と背後へ流れるように広がっていた。
その内側には、戦闘時にどれほど激しく踏み込んでも動きを妨げない短い下衣。
膝上を覆う黒の靴下。
足元を安定させる、重すぎないロングブーツ。
手袋まで嵌め終えた時、私はゆっくりと鏡へ顔を上げた。
そこに立っているのは、師匠の後ろを歩いていた旅の少女ではなかった。
黒の団服を纏った、一人のエクソシスト。
鏡の中の自分を見た瞬間、胸の奥が静かに締め付けられる。
重い。
けれど、それは服の重さではない。
この黒を纏って、戦場へ立つのだという意味の重さだった。
私は小さく息を吸う。
喉は苦しくない。
腕も動く。
脚も、問題なく踏み込める。
ジョニーが考えてくれた通りの、私が戦うための服だった。
「……着替えたわ」
衝立の端へ手をかけ、外へ出る。
待っていた二人が、同時にこちらを見た。
一瞬、声が止まる。
最初に息を零したのは、リナリーだった。
「……すごく素敵」
彼女の瞳が、ぱっと明るくなる。
リナリーはすぐに私の傍へ駆け寄ると、まるで壊れ物へ触れるように、そっと袖口の銀の縁取りへ指を添えた。
「本当に似合ってるわ、ティファ。黒が綺麗に映えて……銀の線も、とても上品」
その視線が、肩の装甲から胸元の紋章、腰のベルト、そして長い裾へと移っていく。
「それに、ちゃんと動きやすそう。これなら任務でも安心ね」