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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第2章 【第一話】雪に残る歌


「……お母さんが……」

声にした瞬間、堪えていたものが再び崩れた。

「クロス・マリアンを……探しなさいって……」

男の瞳が、僅かに細くなる。

「……クロス……?」

確かめるように呼ぶと、男はしばらく黙って私を見ていた。

やがて、面倒そうに頭を掻く。

「……ああ。俺がクロス・マリアンだ」

その言葉を聞いた瞬間、胸の奥が痛いほど震えた。

母が最後に託した名前。

けれど、その人を見つけた時には、もう母はどこにもいなかった。

「……あなたを、探せって……」

髪紐を握る手に、力がこもる。

「でも……お母さんは……もう……」

それ以上、言葉にならなかった。

クロスは何も慰めなかった。

可哀想だとも、大丈夫だとも言わない。

ただ黙って、雪の上に残された灰と、私の手の中の髪紐を見下ろしていた。

やがて彼は、低く呟く。

「……最後の最後で、とんでもねぇもんを残しやがったな」

その言葉の意味は分からない。

ただ、この男が母の言っていた人なのだということだけは理解できた。

やがて彼は私の傍へ歩み寄ると、膝をついた。

「そいつを見せろ」

「……嫌……」

私は髪紐を胸へ抱き込む。

取られると思った。

母の最後の名残まで失うのが怖かった。

クロスは眉を寄せたが、無理に奪おうとはしなかった。

代わりに、私の喉元へ視線を向ける。

「……歌ったのか」

「……分からない……」

涙が止まらない。

「勝手に……声が出て……光が……お母さんも、あれも……消えて……」

「消えたんじゃねぇ」

低い声が、私の言葉を遮った。

私は顔を上げる。

クロスは雪の上の灰を見たまま、淡々と言った。

「その女の身体は、AKUMAのウイルスに殺された。どのみち、もう助からなかった」

胸が、引き裂かれるように痛んだ。

「……じゃあ……私が歌っても……」

「身体は救えねぇ」
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