第10章 Cries in vain★
紅孩児side
「……なるほどな」
一通り泣いたあと、落ち着いた彼女から你健一との関係性や一連の流れを大まかに聞いた俺は、はぁとため息をついた。
幼少期からの知人ならまず疑いはしないだろう。彼女の師匠だという光明三蔵の知り合いなら尚更だ。
…にしてもまさか你健一が烏哭三蔵法師だったとはな。つくづく食えない男だ。
「それで…私はこれからどうなるんでしょう…」
「そうだな…率直に言うとこのまま帰すわけにはいかない」
丁度その時八百鼡が食事を持って入ってきたのでそのまま共に話を聞くことにしてもらった
「私からも華楠さんに聞きたいことがいくつかありまして…」
「答えられることなら…」
「三蔵さん達が貴女と旅をするようになってから変わったと言いますか…強くなったようにお見受けしたので…何故なのかと…」
八百鼡の質問に、彼女はぽかんとしている
「あ、あの、何か特別なことをしたとか…ないですか…?」
眉間に皺を寄せながらうーんうーんと記憶を思い起こしている彼女に、俺と八百鼡は顔を見合わせた
「あ!!ラジオ体操を始めました!」
は?
想像の斜め上を行く返答に呆気に取られる
「朝起きてすぐ太陽のエネルギーを浴びることは身体に良いんですよ〜」
「ちょっと待て、他には!?」
「毎日お風呂、食後の歯磨き、早寝早起き、です!」
「それは…普通の事だと思うのだが?」
「それが出来ていなかったんです。あの4人は。あ、八戒以外だから3人か…」
はは、と笑う彼女を前に言葉が出てこない。今までどんな生活を送っていたんだ、あいつらは。
「私、初めて紅孩児さんと会った時に感動したんです。ああ、ちゃんとした人(妖怪)だ…って。だから天下の三蔵一行が恥ずかしくないように、生活習慣を整えることから始めました」
恥ずかしい。
我が敵ながら恥ずかしい。
こんなヤツらに手こずっている自分も恥ずかしい。隣で聞いている八百鼡がくすくす笑っているのが分かる。