第13章 新学期
夏休み明けの雄英高校。
朝の空気はまだ少しだけ涼しくて、季節が完全には戻りきっていない感じがする。
校門前。
そこに、なぜか最初からいる二人がいた。
爆豪と轟。
「………」
「………」
会話なし。
ただ、同じ方向を見ている。
そこへ。
ユカリが登校してくる。
「……!」
爆豪の目が一瞬だけ動く。
轟も静かに視線を上げる。
「あ、爆豪くん、轟くん。おはよう!」
二人に気付いて、笑って手を振るユカリ。
空気が少しだけ変わる。
久しぶりに見る“本人”。
制服姿。
揺れる髪。
やわらかな笑顔。
夏休みの間ずっと画面越しだった存在が、目の前にいる。
爆豪は一歩も動かないまま言う。
「遅ぇ」
轟も同時に。
「おはようございます、ユカリ先輩」
でも声の温度は少しだけ柔らかい。
ユカリは一瞬きょとんとしてから、笑う。
「二人とも待っててくれたの?」
その笑顔で。
二人とも一瞬だけ止まる。
「……待っててくれてありがとう」
少し照れたユカリの何気ない一言で。
爆豪の眉がわずかに動く。
轟の視線がほんの少しだけ細くなる。
(……クソ可愛い)
(……可愛すぎる)
二人とも、言葉にしないまま思っている。
ユカリが歩き出す。
その横に、自然に爆豪と轟が並ぶ。
距離は以前と同じ。
なのに。
空気だけが、少しだけ違っていた。
夏休みまでの間に積み重なったものが、そのまま残っている。
爆豪は横目でちらりと見る。
轟も同じタイミングで見る。
目が合いそうになって、どちらも逸らす。
でもどちらも分かっている。
(好きが減ってない)
むしろ――
増えている。
校舎へ向かう朝の道は、いつもより少しだけ騒がしかった。