第3章 1年A組
「なあ聞いたか?」
昼休みの1年A組。
誰かの一言をきっかけに、教室の空気が一気にざわついた。
「また爆豪と轟がユカリ先輩取り合ってたらしい」
「もう隠す気ないよな……」
「いやでも分かる、あの先輩めちゃくちゃ可愛いし」
その瞬間。
教室の後方で机に突っ伏していた爆豪がガタン!!と顔を上げた。
「……はァ?」
空気が凍る。
「え、いや、その……」
「テメェらが軽々しく語っていい相手じゃねェんだよ」
怖い。
怖いのに。
その直後。
「で、でもユカリ先輩って笑顔ふわふわで可愛いよな〜」
「あといい匂いする」
「面倒見いいし」
「スタイルもやばい」
爆豪、完全にキレるかと思われた。
だが。
「……当たり前だクソが」
「えっ」
教室が静まる。
爆豪は腕を組みながら、不機嫌そうに続けた。
「笑った時ちょっと目ぇ細くなんだろ。あと褒められると照れて耳赤くなる」
「…………」
「疲れてる時に甘いモン食ってる顔もかわいい」
クラス全員、固まった。
「え、爆豪そんな見てんの!?」
「うるせェ!!」
耳が真っ赤だった。
その隣では、 轟が静かにお茶を飲んでいた。
「轟は?なんかある?」
すると轟は真顔で少し考え、
「ユカリ先輩はかわいい」
「雑!!」
「全部かわいいから絞れねぇ」
あまりにも本気だった。
教室がざわつく。
轟は気にせず続ける。
「髪を耳にかける仕草とか」
「笑う時に肩揺れるところとか」
「人を褒める時、ちゃんと目を見てくれるところとか」
「眠そうな顔とか」
「待って待って待って」
麗日お茶子が思わず止める。
「轟くん、だいぶ重症やで!?」
「そうなのか?」
「無自覚!?」
轟は平然としていた。
「昨日も眠そうにしてたからコーヒー渡したら、“ありがとう、轟くん優しいね”って笑われた」
一瞬黙る。
そして。
「……可愛かった」
完全に恋する男の顔だった。
教室中が悲鳴を上げる。
「うわぁぁぁ!!」
「なにそれ!!」
「少女漫画!?」
すると、爆豪が苛立ったように机を蹴った。
「テメェだけ見てんじゃねェよ」
「事実だ」
「俺だって見てるわ!!」
「張り合うところそこ!?」