第12章 夏休み
だが――
その一方で。
画面のこっち側。
空気が変わる。
爆豪の目が細くなる。
「……海?」
低い声。
聞き逃がせないワードが確かにあった。
轟も静かに言う。
「ユカリ先輩、いつ海に行ったんですか?」
『え、昨日だよ?』
その瞬間。
爆豪の机がギシッと鳴る。
「……おい、何勝手に遊んでんだ」
『えぇ!?』
画面越しでも分かる圧。
ミリオは気づかずに笑う。
『いやぁ〜リフレッシュって大事だよね〜!』
環は小さくため息。
『……ミリオ、うるさいって言ってる』
轟は静かに一言だけ。
「俺も行きたかったです」
切島が後ろで吹く。
「嫉妬してるだろ今絶対!」
上鳴も爆笑。
「いや露骨すぎるって!」
画面の中のユカリは、少し困ったように笑う。
『ごめんね?急に行くこと決まっちゃって』
その一言で、空気が少しだけ落ち着く。
しかし爆豪はまだ納得していない顔で画面を睨む。
「次は呼べ」
即答。
轟も続ける。
「俺も絶対行きます」
ビデオ通話は一通り騒がしくなったあと、ようやく終わりへと向かう。
ねじれが手を振る。
『じゃあね〜みんな!学校がんばってね〜!』
ミリオも笑顔で続ける。
『またね〜!』
隣で環は少しだけ無言のまま、軽く会釈した。
『じゃあ、切るね』
ユカリがそう言うと、教室が少しだけ名残惜しそうになる。
その瞬間だった。
爆豪が即座に言う。
「待て」
『え?』
「海の写真送れ」
空気が止まる。
出久が「えっそこ!?」って顔をする。
隣で轟も静かに頷いた。
「俺も見たいです」
「いや待って待って」
切島が爆笑する。
「今それ要求する!?別れ際のテンションじゃねぇだろ!」
上鳴も笑う。
「なんで彼氏みたいな要求してんの!?」