第7章 彼氏予想大会 / 熱
―おまけ―
数日後。
熱も下がり、すっかり元気になったユカリは職員室へ呼び出されていた。
「失礼しまーす」
ドアを開けると、そこには相澤。
いつもの寝不足顔で書類を見ている。
「座れ」
「はい?」
ユカリは首を傾げながら椅子へ座った。
「体調は」
「もう大丈夫です!ご迷惑おかけしました」
「ならいい」
相澤は淡々としている。
だが。
なぜか少しだけ、“言うか迷ってる”顔をしていた。
「……?」
ユカリが不思議そうにしていると。
相澤がぽつり。
「お前、保健室で寝言言ってたぞ」
一瞬固まるユカリ。
「……え?」
嫌な予感。
相澤は疲れた顔のまま続けた。
「爆豪と轟の名前呼んでた」
「ええぇぇ!?」
ユカリ、完全停止。
顔から湯気が出そうだった。
相澤は遠い目をする。
「その場にいた二人がどうなったと思う」
「き、聞きたくないです……」
「耳真っ赤にして固まってた」
「やめてくださいぃぃ!!」
職員室の隅で、 プレゼント・マイク が肩を震わせている。
「しかもあいつら、お前の寝顔見ながらずっと騒いでたぞ」
「はい!?」
「“かわいい”“睫毛長い”“連れて帰りたい”」
「待って最後何ですか!?!?」
「轟」
「轟くん!?」
衝撃。
ユカリは顔を覆った。
無理。
情報量が多い。
相澤はため息をつく。
「お前ら最近周囲巻き込みすぎだ」
「すみません……」
しゅん。
すると相澤は少しだけ口元を緩めた。
「まぁ」
「?」
「お前、あいつらにかなり好かれてるな」
その言葉に、ユカリの鼓動が跳ねる。
分かってる。
分かってるけど。
教師に改めて言われると破壊力が違った。
「……どうしたらいいと思います?」
ユカリが小さく呟く。
すると相澤は即答した。
「知らん」
「ですよね」
「自分で決めろ」
静かな声。
でも少しだけ優しかった。
「恋愛はヒーロー科でも教えねぇ」
「……はい」
ユカリが苦笑する。
その様子を見た相澤は。
(……めんどくせぇ青春だな)
と、心底疲れた顔でコーヒーを飲んだのだった。