第5章 彼氏候補
夕焼けの中、ユカリは真っ赤な顔のまま歩き続ける。
すると少しして、轟がぽつりと呟いた。
「……でも」
「?」
「今日、先輩が誰を考えてたのか気になる」
「俺も」
即答。
ユカリはぎゅっと鞄を抱きしめた。
言えるわけない。
でも。
二人に挟まれて歩いている今。
さっきからずっと胸が苦しいくらいドキドキしている。
その理由くらい、ユカリ自身ももう分かり始めていた。
すると突然、爆豪が立ち止まった。
「先輩」
「え?」
振り返った瞬間。
爆豪が少し屈んで顔を覗き込んでくる。
近い。
近すぎる。
「……俺だったらいいのにって思った」
「!!」
呼吸が止まる。
そのまま固まるユカリの横で、轟も静かに言った。
「俺は、“俺であってほしい”って思ってます」
追い討ち。
完全に逃がす気がない。
ユカリはとうとう耐えきれず、両手で顔を覆った。
「む、無理……」
「何が」
「二人とも距離近いし言葉強いし心臓持たない……!!」
その反応を見た瞬間。
爆豪と轟が同時に黙る。
そして数秒後。
「……かわい」
「可愛いです」
「だからやめてぇぇぇ!!」
住宅街に、ユカリの悲鳴が響いた。