第15章 体育祭
***
その夜。
環のスマホがずっと震えていた。
送信相手。
爆豪勝己。
轟焦凍。
メッセージはシンプル。
『写真』
『まだかよ』
『先輩』
『お願いします』
『一枚でいい』
『送れ』
『無視すんな』
『寝れない』
環は頭を抱える。
「なんなんだあいつら……」
しかも圧がすごい。
既読をつけるたびに催促が来る。
相談したミリオからは「もう送ってあげれば?」と笑われ、波動さんからは「見たいんだよ〜!」と追撃された。
そして。
環はついに根負けした。
「……一枚だけ」
スマホのアルバムを開く。
そこにあったのは、小学生時代のユカリ。
少し短い髪。
制服姿。
両手でピースして、満面の笑み。
しかも無防備に可愛い。
環は数秒迷ってから送信した。
『これだけ』
既読。
爆速。
まず轟。
『……可愛すぎる』
返信が早い。
次に爆豪。
しばらく無言。
そして。
『は?』
『なんだこれ』
『反則だろ』
『可愛すぎんだろクソが』
完全に死亡。
轟も静かに追撃する。
『小学生でこれなのか』
『無理だ』
『好きが増した』
環はスマホを見ながら遠い目をした。
(なんで俺がこんなことを……)
その頃。
爆豪は部屋でスマホを見たまま固まっていた。
笑顔。
小さいピース。
幼い顔。
全部刺さる。
「……っ」
心臓がうるさい。
轟も自室で静かに写真を見つめていた。
何回も拡大してしまう。
(昔からこんなに可愛かったのか)
二人とも、完全に終わっていた。
そして数分後。
環のスマホに同時に届く。
『他のも送れ』
『もう一枚だけ欲しいです』
環は無言でスマホを伏せた。
「……もう寝よう」
こうして、環の長い1日は終わりを迎えたのだった。