第6章 終わりと始まり
今日は加賀さんとの約束の日。
初めてではないけれど、地上に出るのは少し緊張する。
待ち合わせの時間までまだ余裕があるし、少し辺りを歩いてみることにした。
こうして見ると、吉原とあまり変わらないんだなぁ。
キョロキョロしながら歩いていると、少し先に不思議な人を見つけた。
天気が良いのに、傘をさして黒づくめ。
なんか、怪しい…。
目を凝らすと、見覚えのある顔があった。
「阿伏兎さん!!?」
「お、あんたあの時のお嬢ちゃんか!」
阿伏兎さんの話によると、船を出た神威が戻らないみたい。
いつものことらしいけど、何だか嫌な予感がするから探してるって。
嫌な予感か…。
ふと、脳裏に“あの”夜の出来事が浮かんだ。
まさか…ね。それに、神威がここにいるとも限らないし。
「じゃあ、お嬢ちゃん。うちの団長見かけたら、俺が探してるって伝えといてくれねェか?」
「あ、はい!」
「悪いね。」
阿伏兎さんは、また神威を探しに歩いて行った。
この広い街で、神威にばったり会うことはないかもしれない。
そう思う反面、やっぱり少し不安を抱きながら、加賀さんとの待ち合わせ場所へ向かった。