第5章 宿主を持たない刃
「……また、そこを割ったか」
地下の薄暗い医務室。
リヴァイが呆れたような、けれど底冷えするような声で言った。
私の右腕は、内側からの圧力に耐えかねたように皮膚が裂け、どくどくと鮮血を流している。
巨人に襲われたわけじゃない。ただ、自らの限界を超えた膂力に、肉体がついていかなかっただけだ。
「すみません。でも、あの巨人のうなじを削るには、これくらいの出力が必要だったので」
私はアッカーマンの遺伝子実験が生み出した失敗作。
リヴァイ兵長やミカサのように、一族の驚異的な力を引き出すことはできる。
けれど私には、彼らのようにリミッターを外しても肉体を保護する完璧なアッカーマンの骨格がない。
力を振るえば振るうほど、自分の骨が軋み、筋肉が断裂する。
そして何より――私には、命を捧げるべき「宿主」の存在がなかった。
アッカーマンは本能が選んだ主を守るために真の力を覚醒させるというが、私にあるのは「ただ戦って死ね」とプログラミングされた、歪な戦闘本能だけだった。