第1章 1章 出会いと新生活
着氷した瞬間,世界は静まり返る
刃が触れたその一点から
張りつめた空気が細く裂けていく
観客のざわめきも,遠くのアナウンスも
もう耳には届かない
ただ,自分の呼吸と心臓の音だけが
やけに大きく響いている
——ここで決める
リンクの中央に立つ俺は,ゆっくりと視線を上げた
白い氷に映る自分の姿はどこか
他人のように冷たく,それでいて確かに自分だった
あの日,初めて失敗を知った時から
この瞬間のために滑ってきた
逃げる理由はいくらでもあった
でも,ここに立つ事だけはやめなかった