第2章 黒尾先輩の彼女がただ強いだけの話(研磨視点)
「唇、切れてる。……ここと、ここも」
「ごめん、なさい」
「なんでこんな無茶したの」
「だって、……黒尾先輩のことなにも知らないのに色々言うから腹立って」
いくら腕っぷしが強くても、当然無傷じゃ済まないわけで。ぱっくり開いた唇の端に何発か入れた拳と二の腕にも、欲しくもない勲章ができている。
そこを自分の指先でゆっくり撫で上げていくクロは、俺のために?って思いと、お前人投げたの?って思いが複雑に絡んだなんとも言えない表情をしていた。
「マジで心臓止まるかと思ったしびびってテンパって階段踏み外しそうになったからね?」
「ごめ、……なさ、い」
「あーもう泣かねぇの、怒ってるわけじゃないから。な?」
いつも底無しに明るい彼女が初めて人前で泣いた。それも自分のために、自分を思って流す涙をクロはいったいどんな気持ちで見つめているのかおれには分からないけど。
「もう休憩おわるから、あとは2人でよろしくね」
ロングの清楚な美人がタイプ。
少なくとも勝手に作ったあの理想像とやらは、一生かかってもこの光景には勝てないことだけは分かった。