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HQ短編集

第5章 恋愛の三種の神器を語っていたら目の前の男が全部持ってた話②



相性良かった?
どこが?どのあたりが?

触れる指先に絆されたから?彼の唇のほうがずっと甘かったから?入った感覚もジャストフィットだったから?

相性良かった?
冗談じゃない。
相性、死ぬほど良かった、だよ。

ついさっきまで絡み合っていたのに、思い出すだけでもう熱がこもる。
治の私を見つめる視線まで浮かべてしまえば、重い体を反転させて自分から彼の胸に顔をくっ付けてしまう。

素直じゃない私は返事の代わり、背中に回した腕に力を込めた。


「で、どうせ泊まってくんやろ?」
「………帰るよ」
「ほ〜、そうかそうか、帰るんか、ならしゃあないな」
「なにその言い方」
「別になんもないわ。お前にとっては相性も微妙やったんやろな。また明日からお友達に戻るんやなぁと思って。あー寂しいわ」
「………」


薄々気付いてた。だって何年友達やってると思ってるのって話で。

なし崩しに体の関係だけを求めてるんじゃない、それは分かってる。ただの成り行きならあんな風に扱わない。治なら尚更。この男は最初からお友達に戻る気なんてさらさらなかったんだ。

のこのこと着いてきた時点で、いやその数時間前、私が了承した時にはもう全力で落としにかかってた。

不器用で言葉の裏をかかないと分かりにくいそんな好意をぶつけられたら白旗を上げるしか術はないわけで。


「……泊まる」
「ん?なんて?」
「だからとまっ、んんっ、もっ、やめてってば」
「いやや。お前が美味そうなんが悪いねん」


勝ち誇った顔で笑った治の唇が顔中に降ってくる。鼻の先、瞼、おでこにも頬にも、もちろん唇にも。おかげで私の顔面はベトベトだ。

泊まるんならそう言うことになるけど、ええの?なんてどの口が言ってるんだか。


「毎日ごはん作ってくれる彼氏がちょうどほしかったの!だからいいの!」


人間、開き直りも時に流されることも大事だ。
私のなけなしの意地とプライドで放った言葉も治の余裕たっぷりの笑みにあっけなく溶かされて消えていく。


「……最高やん。なら俺が一生分腹いっぱいにしたるわ」


そう言って耳たぶを甘噛みした治の声は今まで聞いたどの言葉よりも甘くて、悔しいくらいに熱を帯びていた。

三種の神器、全部合格。ついでに言うなら私の心も全部持ってけ、バカ!



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