• テキストサイズ

HQ短編集

第3章 恋愛の三種の神器を語っていたら、目の前の男が全部持っていた話



「本気?なの?」
「じゃなかったら事あるごとに泣きべそかいてるお前よしよしせんやろ」
「よしよしされた覚えがないんだけど」
「話聞いてる時点でよしよしやろ。しかも他の男の愚痴なんか早々誰も聞いてくれへんぞ」


治のこれが本当だとして、私が彼ならどう思うだろうか。好きな人の口から自分以外の人間を想って悩む姿をどんな気持ちで見るだろうか。

ああ無理だ。想像するだけで耐えられない。死ぬほどキツい。

それをこの男は今まで淡々と受けてきたのだろうか。気持ちを腹の底に押し込めて。だとしたら、もしかして私はものすごく愛されているんじゃないか。治の言うジャストフィットも強ち間違ってない、いやどんぴしゃすぎて怖いまである。


「ほんで、あと一個やな」
「あー、それはなんか、今はもういいや」


そんなことよりとうに冷めたお茶を丁寧に注ぎ足してくれる彼を、穴があくまで観察することの方がよっぽど大事だ。いつから、なんで、どこが良かったの。聞きたいことも山ほどある。

どう崩していこうかと企んでいると、大事や言うたんお前やろって、ごもっともなつっこみが返ってきて、そうしてまた、私を夢でも見ているんじゃないかと錯覚させるんだ。


「今から確かめに行くか?体の相性」
「は?」
「お試しで。あかんかったら元通り友達のまんまでええやん」
「は?」
「そこそこ合う思うで」
「………」
「いやだから固まんなて」


意地の悪い笑みを乗せた治の手が伸びてくる。指先が頬に触れた瞬間びくりと肩が跳ねるけど、親指と人差し指で私のそれを引っ張る力に少しだけ痛みが滲んでいく。

閉め作業ちょい時間かかるから待っとって。

その言葉に思わず頷いてしまった自分にもムカつくけど、何がムカつくって、器に寂しく鎮座する残り半分のおにぎり。

冷めているのにちゃんと美味しいのがこれまためちゃくちゃ悔しかった。


/ 34ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp