【ヒロアカ】名前のない関係の終わらせ方【爆豪勝己】
第1章 1
ぽつりと、独り言のように。
「なぁ……この関係続けてて良いのか?」
「…どうゆうコト?」
透は少し目を開ける。
爆豪は撫でる手を止めないまま、天井を見ている。
「別に。深い意味はねぇ。」
深い意味しかない顔をしていた。眉間に皺が寄り、唇が一文字に結ばれている。
「セフレ」という言葉が喉元まで来て引っ込んだのが見て取れた。
好きだと言えば関係が変わる。変えたくないのか、変えるのが怖いのか——おそらく両方。
「彼氏とか…作らねぇのかよ。」
透は少し考えて
「…今は要らないかな。めんどい。」
その「めんどい」にはいろいろな理由や意味があったが、爆豪はそれを知る由も無い。
それよりも、「今は」の二文字が引っかかった。今は、ということは——いつかは作るということだ。
頭を撫でていた手が一瞬止まり、また動き出した。何事もなかったように。
しかし腕の中の透には伝わったかもしれない。心拍が少しだけ速くなったことに。
「そうかよ。
……てめぇモテんだろ。」
ぶっきらぼうに付け足した言葉の裏には、「だからいつまでもこうしていられると思うなよ」という自分への牽制が透けている。
「…別にモテないよ。」
「嘘つけ。」
即答だった。一切の迷いがない。能力も顔もスタイルも良くて性格まで
——少なくとも爆豪にとっては——悪くない透がモテないわけがないと、本人よりも確信を持っていた。
少しだけ腕の力を強める。無自覚に。
「雄英の時だって——」
言いかけて、口を閉じた。何か思い出したくない記憶に蓋をするように。
透は薄く笑う。
「好きな人に好かれなかったら意味無いよ。」
心臓が一回、大きく跳ねた。
暗い部屋で良かった。今の爆豪の表情は——目が見開かれ、唇が微かに震え、顔全体が紅潮している。
数秒の沈黙。それから、絞り出すように。
「……てめぇにもそういう奴いんのか。」
声が上擦っていた。
「好きな人」が自分である可能性を考えないようにしている。考えてしまったら、答えを聞いた瞬間に全部壊れる。だから必死に話をただの雑談のようにして振舞っている。