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【呪術廻戦/短編集R18】夜更けの花屋は恋を売る

第9章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ II **


「私ね……恵くんのことが大好きなの」



ずっと言いたかった言葉。
声に出せず、心の中で何度も繰り返してきた言葉。

一度口にすると、伝えたいことが次々に溢れてきた。



「恵くんが笑ってると、私も嬉しくなるの。辛いことがあったら、そばにいてあげたい……困ってたら、私が助けてあげたい」



少し恥ずかしかったけれど、もう隠したくなかった。



「……私、恵くんとずっと一緒にいたいの。守ってもらうだけじゃなくて、私も恵くんを幸せにしたい」



言い終えると、我慢していた涙がこぼれていく。

その時、ふわりと頭に大きな手が置かれた。
顔を上げると、恵くんが隣に膝をついていた。



「……あんたが十年間、から声を奪ったことは、許す気はありません。」

「でも、俺はあんたを裏切った男とは違う。は、俺が一生大事にします。絶対にひとりにはしません」

「……っ、恵くん……」



お母さんは、しばらく恵くんを見つめていた。
それから私へ目を向け、静かに微笑んだ。



「……大きくなったわね……」



あの巣で暮らしていた頃、私はただ生きるために、冷たい腕にしがみついていた。



「……お母さん」



今度は、生きるためじゃない。

手を伸ばし、お母さんの身体を抱きしめた。
細い背中に腕を回すと、ほんのりとした温もりが伝わってくる。


あったかい。
夢の中と、同じだ。



「私を生んでくれて、ありがとう。だから、私……恵くんと出会うことができたよ」



お母さんの腕が、私の背中に回された。



「お母さんと呼んでくれて、ありがとう。……幸せに、なるのよ」



その瞬間、腕の中の感触が、ふわっと消えた。


お母さんの身体が、幾千もの白い光の粒となってほどけていく。

最後に、春のような温かい風が私の頬を撫で、薄暗い工場の空気に溶けて消えていった。
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