第9章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ II **
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高専に戻ると、俺たちはすぐに伊地知さんが待つ会議室へ向かった。
「伊地知、例の件はどうなってる?」
「はい。ようやく、気になる記録が見つかりました」
伊地知さんは手元の資料に目を落とした。
その表情は、いつになく硬い。
「……十五年ほど前、ある夫婦が呪いに殺され、当時まだ赤ん坊だった娘が行方不明になった事件がありました。伏黒くんもご存じですよね」
「……のことですよね」
「はい。今回、その事件について改めて調べ直したところ、新たな事実が判明しました」
伊地知さんが、資料の束を俺たちに差し出す。
「実は、当時殺された女性は、さんの実の母親ではなかったんです」
「……え?」
「父親の再婚相手だったんですよ。さんの父親には、以前、別の女性と結婚していた過去がありました。その女性こそが、さんを産んだ実の母親です」
伊地知さんは資料をめくり、古びた写真を机に置いた。
そこには、若い女が赤ん坊を抱いて写っている。
この人が、の本当の母親なのか。
「夫は別の女性と関係を持ち、離婚。生まれたばかりの娘も父親に引き取られました。そして実の母親は、娘と引き離された後、不慮の事故で亡くなっています」
「それが、姑獲鳥とどう関係あるんですか?」
「問題はその後なんです。……女性が事故死した後、付近では姑獲鳥と思われる怪異の目撃情報が相次ぐようになりました。そして、あの事件が起きた。とても偶然とは思えません」
まさか。
それじゃあ、あの呪霊は――。
五条先生が、机の上の写真を指差す。
「姑獲鳥の正体は、の実の母親だった可能性が高いってこと」
「……っ!」
実の、母親?
あいつを十五年間も苦しめてきた呪霊が?