第9章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ II **
「まだ近くにいるかもしれない。玉犬たちが何か見つけるかもしれないだろ!」
「恵」
「俺は戻りません。が見つかるまで、ここで――」
「恵、聞いて」
五条先生の声が、俺の言葉を遮った。
「気持ちは分かる。でも、闇雲に探したって見つからないよ。相手は十年間も姿を隠し続けてきた呪霊だ。そう簡単に尻尾を掴ませるとは思えない」
「そんなこと、分かってますよ!」
分かってる。
そんなこと、俺だって分かってるんだ。
だけど。
だからって、何もしないでいられるわけねぇだろ。
「……が、どこかで待ってるんです。怖い思いしてるかもしれない。助けを求めてるかもしれないのに……っ」
ノートを握りしめた拳が震える。
もし、このままが見つからなかったら。
もう二度と、会えなかったら――。
……冗談じゃねぇ。
俺はまだ、あいつに何も伝えてないんだよ。
ずっと好きだったことも。
これから先も、隣にいてほしいってことも。
昨夜、ようやく届いたと思ったのに。
こんなところで、終わらせてたまるか。
五条先生はしばらく黙っていたが、呆れたように頭を掻いた。
「恵はのことになると、ほんと周りが見えなくなるんだから。僕も、ただ手をこまねいてるわけじゃない。少し前から、伊地知に調べてもらってることがあるって言ったでしょ」
「……調べてること?」
「さっきの証言を聞いて、ちょっと気になることができた。まだ確証はないけど、もし僕の考えてる通りなら……」
そこで言葉を切り、再び先生は俺を見る。
「の居場所を突き止められるかもしれない」