第9章 【伏黒恵】君に響くカンパニュラ II **
𓂃 side:伏黒恵 𓂃
荒川付近の商店街に到着すると、通りの一角には規制線が張られ、数人の補助監督が慌ただしく動き回っていた。
辺りには、姑獲鳥の残穢がまだ色濃く残っている。
本体はもうここにいないはずなのに、肌にまとわりつくような呪力が消えていない。
これだけの残穢を残す呪霊が、どれほどのものだったのか。
考えただけで、腹の底が冷えた。
俺たちに気づいた補助監督が駆け寄ってくると、五条先生が尋ねた。
「状況はどんな感じ?」
「現在、目撃者の方から詳しい状況を確認しています。さんの捜索も続けていますが……まだ……」
「……っ」
無意識に拳を握り込む。
「恵」
五条先生が俺の肩を軽く叩いた。
「冷静になれ。呪力が乱れてる」
「…………」
補助監督に案内されて規制線の内側へ入る。
少し先では、若い男女が別の補助監督から事情を聞かれていた。
「だからさ! 急に鳥みたいなのが出てきたんだって! しかも、めっちゃデカいやつ! でも顔は女みたいでさ! マジで気持ち悪かったんだって!」
男は興奮した様子で身振り手振りを交えて話している。
一方、隣にいる女は青ざめた顔で俯いていた。
栗色の長い髪。
昨日会った、中学の同級生だ。
「……お前、なんでここに……」
俺の声に、女が顔を上げる。
「伏黒くん……?」
すると、隣にいた男が俺たちを交互に見て、口を挟んできた。
「え、知り合い? ノート持ってた子も知り合いって言ってたよな?」
「お前ら、に会ったのか?」
「?」
「そのノートを持ってた子だよ!」
男が何か答えるより先に、同級生の両肩を掴んでいた。