第7章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を離さない**
恵の部屋は、確かこの廊下の先だ。
手に持ったファイルを軽く振りながら歩いていると、恵の部屋の前に一冊の本が落ちているのが見えた。
「……ん?」
近づいてみると、半分ほど開いたままになっている。
悠仁は本とか読まなそうだから、きっと恵のだろう。
でも、なんでこんなところに?
しょうがないなぁ。
ファイルと一緒に渡してやるか。
僕って、やさしい。
本を拾い上げ、ノックしようとした、その時。
――どんっ。
扉の向こうから、何かがぶつかったような鈍い音がした。
「……?」
続いて、微かに声が聞こえた。
「……んっ、ぁ……っ」
今の。
聞き間違えるわけがない。
「だめ……っ、ふしぐろ、くんっ……」
「、我慢しなくていい」
「んぅ……っ、はぁっ、や……っ」
二人が何をしているのかなんて、想像するまでもなかった。
『その呪い、俺が祓ってやります』
僕がに呪いをかけたと言ったら、恵は真正面からそう返してきた。
僕は笑った。
恵に祓えるわけないって。
僕の呪いだよ、って。
ああ。
そういうこと、恵。
これが、君の言ってた「祓う」ってこと?
「や……っ、ん、ふしぐろ、くんっ……!」
扉の向こうから、またの声が聞こえる。
なんで。
なんで、恵の名前呼んでんの。
恵に触れられてると思っただけで腹が立つ。
が恵の名前を呼ぶたびに、今すぐこの扉を開けたくなる。
連れ出して。
僕を見ろって。
僕の名前を呼べって。
僕がにかけた呪い。
彼氏を作るなって。
僕以外の男を選ぶなって。
「……くくっ」
笑えるね。
とっくに離せなくなってるのは――。
僕の方じゃん。