第7章 【五条悟・伏黒恵】クロユリは君を離さない**
「恵とは術式の相性もいいし、任務だって一緒になること多いからね。二人で出かけることくらいあるけど、そういう関係じゃないよ」
硝子が煙草を咥えたまま、じっと僕を見る。
そして、煙を吐いて、ふっと口元を歪めた。
「なに?」
「珍しく必死だな。私、二人で出かけてたって言っただけなんだけど」
「いや、硝子が付き合ってるのかって聞いたんでしょ」
「まあ、そういうことにしとく」
硝子はそれ以上追及する気もないらしく、短くなった煙草を携帯灰皿へ押しつけた。
「じゃ、伏黒に渡しといて」
硝子はひらりと片手を上げて、校舎の方へ歩いていった。
一人になって、手に持ったファイルへ視線を落とす。
恵とが二人で出かけた。
任務以外で二人きりになることだって、別におかしくはない。
……おかしくは、ないけど。
もし、僕のいない間に恵がに何かしてたら。
そう考えた途端、妙に落ち着かなくなった。
前なら、こんなこと考えもしなかった。
が誰といようが。
誰に何を言われようが。
最後には僕のところに戻ってくるって、当たり前みたいに思ってたから。
あの日から、なんか変だ。
恵がの近くにいるだけで。
二人きりになったと聞くだけで。
いちいち引っかかる。
「……ちっ、めんどくさ」
それ以上考えるのも面倒で、寮へ足を向けた。
学生寮はやけに静かだった。
いつもなら誰かしらの声が聞こえてきそうなのに、今日はそれもない。
……ああ。
悠仁と野薔薇は、京都校に行ってるんだっけ。
あの二人がいなきゃ、そりゃ静かなわけだ。