第3章 色づいて、舞い踊る
「今日はお前が決めていいぞ」
「じゃあ、5本8セットで」
「おいおいえらく強気だな、へばるなよ?」
「太刀川さんこそ。舐めてると足元救われますよ?」
「誰にだよ」
「太刀川さんの可愛い可愛い努力家の弟子にです」
「お、まえ、……それ誰に聞いたんだよ!」
「ないしょ。さて、行きますかね」
踏み込みたいけど踏み込めない。
あたしはまだまだそんな器用じゃない。
例えば彼に、もし何か抱えてるものがあって、それで悩んでいるんだとしても。
話しを聞いてあげるより、大好きな趣味にとことん付き合ってあげた方が、その一時でも楽になれるかなと思ったんだ。
自分から挑発しておいて、参りました、なんて死んでも言いたくなかった。楽しそうに口角を上げてあたしの体を斬り刻む太刀川さんを見ちゃうと尚更。
気を張って素知らぬ顔までして颯爽と本部を出た、
瞬間、一気に押し寄せる疲労感と倦怠感。
今すぐ寝たい、この場で寝たい、道のど真ん中とか関係なくひっくり返りたい。そう思いながら電車に揺られること数十分。やっとのことで最寄り駅。
重い体で夕飯を作る気になれないあたしは、自炊をするという概念を早々に抹消してコンビニに入った。
体を酷使するより頭と神経を使ったほうがよっぽど堪える。普段から滅多と使わない筋肉をいきなり動かせば翌日筋肉痛になるみたいに、宝の持ち腐れよろしくほとんど機能していない頭を急激に回すと同じような現象がおきる、のか?
こんなこと考えるのは、トリガーをひたすら振り回すだけに見えてた模擬戦も、戦略が重要なんだとつくづく思わされたからだ。使って使って使いまくって、それに乗じて動く体でやっとまともにやり合える。体を鍛える術は端末一つでいくらでも見つかるけど、頭を鍛えるのはどうすりゃいいんだよ。
……。
……。