第3章 色づいて、舞い踊る
「お前らすげーな!」
突然かけられた声にはっとなった。駿くんしか入ってなかった視界を広げてみれば、囲むように人だかりができてて焦る。
気迫と熱気でどんどん歪んでいく自分の顔を、奥歯を噛み締めてどうにか堪えようとするけど、引きつった頬は上手く隠せそうになかった。
視線を彷徨わせて、なかなか定まらないそれが見つけた救世主。普段はダメ男、ここでは鬼。
目が合って、自分ではどうにもできないこの状況を、理解したのかただの気まぐれか。
「望月」
「はい」
「昼からも訓練だろ、先にメシ食いに行くぞ」
「はい」
小さくできていた人の輪を割いて、大きな船を出したと思ってる太刀川さんの言葉は、鎮火するどころか火に油。
背中を向けてさっさと行ってしまう彼は、ここでの自分がどういう立場なのかをもっと理解した方がいいと思う。
「あの太刀川さんと知り合いなのか!?」
「すげーなあの人!本物見たの初めてだけどかっけー!」
「貫禄もオーラもはんぱねぇし!」
「めっちゃカッコいい!彼女いるのかな」
前言撤回。救世主なんかじゃない、ただのアホだ。さっきよりも近い距離と言葉の攻撃で目が回りそう。
隣の駿くんに、ごめん、先行くね、それだけ残して逃げるようにそこからすり抜けた。
訓練場の出入り口、腕を組んで壁に凭れかかる太刀川さんを、露骨に睨みあげれば、なんで怒ってんだみたいな表情を返されて深い息が溢れた。
「ほったらかしにして自分だけ先に行くから余計に大変だった」
「あんなもん無視して着いてくりゃいいんだよ」
「そんなスルースキル持ってるわけないでしょ」
「なら早急に身につけろ、あとテキトーに話せる話術もな」
横暴か!
むり言うな!
コミニュケーション能力が人より極端に欠落してるの、知ってるくせに。
なんでこの人は、口を開いたら馬鹿なことか無理なことしか言わないんだ。頭ん中見てみたいよ、本当に。