第3章 色づいて、舞い踊る
慣れとはつくづく恐ろしいなと思う。斬るのも斬られるのも、それを自分の視界に映すことも、もう何の違和感もなくなった。
ただ、2号室、記録5秒。アナウンスが流れるこの空間。訓練場のそこかしこから視線がつき刺さるこの嫌な感じ。見られることに対して慣れていないあたしには拷問と同じだ。
太刀川さん達、絶対あたしの異変に気付いて笑ってたんだろうな、腹立つ。
「花衣ちゃん!」
「うわっ!しゅ、しゅんくん!?」
「すっごかった!めっちゃ早かったじゃん!」
「あ、あり、がと」
ブースを出た直後、待ってましたとばかりに前方から走ってきた勢いのまま、タックルもとい、熱い抱擁をけしかけてきた駿くんを間一髪受け止めた。
背中に手を回してそこそこの力でぎゅうぎゅう締めてくる腕。これ生身だったら肋骨折れるんじゃないの、痛くないから分かんないけど。
眩しい笑顔で凄い凄いと讃えてくれてはいるけど。
「駿くん」
「なにー?」
「そうだね、オレの方が1秒早かったけどね、だもんね?」
「え」
心がダダ漏れですよ。
悪戯心に火が点いたのなんて、いつぶりだろう。
固まったまま冷や汗まで出てくるんじゃないのって顔してあたしを見つめる駿くんに、怒ってもないのに怒った振りして、目を細めた表情をふっと緩めると、疑問符だらけの顔つきに変わった。
「びっくりした?」
「え、え、なんで?」
「んーとね、ここの専門用語で言っちゃうと、サイドエフェクト?かな?」
「花衣ちゃんの?」
「うん、読めちゃうんだよね」
す、すげー!
いいないいなー!
欲しくて仕方のなかった、新しいおもちゃを買って貰って喜んでる時に見せるような。そんな顔して心中を漏らされるとこっちまで緩んでしまう。
引かれるか距離を置かれるか、あからさまに気持ち悪がられるか。それしか体験したことのなかったあたしからすれば、こう言う反応ってすごく新鮮で嬉しい。
こんな副作用持ちでも、なにも変わらない態度や振る舞いが、きっとずっと欲しかったんだ。