第4章 感情線の混線
「足引っ張るの目に見えてます」
「唯我よりマシだろ」
「あの子とは一緒にしないで」
「けっこう失礼なこと言うよなお前も」
感情的になったおかげでついぽろっと本音が溢れた。唯我くん、面白くていい子だけど、それとこれとは別。って、そうじゃなくて。
落ち着かせるために、3分の1ほど残ってたウーロン茶を最後までガブ飲みしたら、途中で息が苦しくてむせそうになった。
なんでこの人はいつも突然、突拍子もないことを言うんだ。なにか意図でもあるのか、ただの気まぐれか。測れない真意は思ったことをすぐに口にするからだろうけど。言われて心底驚くこっちの身にもなってほしい。
「まぁでも、お前は断ると思った」
「じゃあなんで聞くの」
「後ろ盾があるほうが気はラクだろ」
「どう言う意味ですか」
「ソロでやろうがどっか入ろうが、もし嫌になっちまったらウチ来ればいいってこと」
前も言ったけど、お前はガチガチになりすぎるから。もっと力抜いて気楽にやれ。唇の端をほんのすこし持ち上げて、そんなことを平気で言ってしまう太刀川さんの、女の子にモテる理由が何となく分かった気がする。
普段バカなくせに。子供みたいな言動だって多いくせに。模擬戦だってすぐムキになるし、まぐれで1本だけ取れた時なんて、そのあとボコボコのズタボロにするぐらい大人気ないのに。でも。
ごはん食べに行ったら嫌になるほど紳士。
こないだも今も、全部やってくれる。
それに見てないふりしてよく見てる。
観察した上で的確な言葉をくれる。
不安を察して、焦りも察して、尚且つ嫌になったらウチに来ればいいと。
まるで石橋を叩いて渡るどころか、怖くてビビって挙句の果てには叩きすぎて落ちそうなあたしを、落ちても大丈夫だと言うように。
「もっと強くなって、その時ぼっちなら考えてあげてもいいですよ」
「じゃあまた改めて口説くわ」
「そうして下さい」
限りなく上から目線は照れ隠しだ。でもそれもこの人にはバレてる。だから敢えて何も言わないし、なんならどこかご機嫌で酒を煽る太刀川さんには、きっとこの先もずっと頭が上がらないんだろうなと思った。
怖さも弱さも本音も。
漏らした分だけ必ず受け入れてくれる。
だから彼の隣は居心地がいいのかもしれない。