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かるら怪談

第11章 足跡を追うな


「夢中で走って走って、どこをどう抜けたかわからないまま、
 俺はやっと見知った道に転がり出たんだ。
 しかし、一緒の友達とははぐれてしまった。
 俺は、慌てて父ちゃんに助けを求めた。」

「父ちゃんは俺の話を聞くと、
 『わがった』
 と言って、俺の手をグイグイ引っ張って、
 村の寺に連れて行った。
 俺を本堂に座らせたまま、父ちゃんは寺の住職と話していた。
 話は断片的にしか聞こえてこなかったが、
 『モノに会っだ』
 とか、
 『連れでがれた』
 ということは聞こえた」

「住職が来て、なんとも匂いのきつい香を炊き始めた。
 父ちゃんは俺の来ていたシャツを脱がすと、
 自分が着ていた服を着せた。
 『父ちゃんにまがせろ』
 そう言って、寺を出ていった」

「小一時間ほど経っただろうか、
 父ちゃんが戻ってきた、
 住職とまた小声で話をしている。
 『出てこねえ』
 とか、
 『一人で満足さしたか』
 とか、そんなことを話していた」

「結局、一緒にいた友達は帰ってこなかった。
 行方不明、ということになったが、
 俺は、不思議と誰にも怒られることはなかった」

「それは何だったんだ?」
俺は親父に聞いた

「俺もずっとわからなかった。
 でも、10日位前、じいちゃんが急にこの話を俺にして、
 それで、自分でも忘れていたこの話を思い出したんだ」

「じいちゃんは自分が死ぬのがわかったからかもしれない。
 俺もじいちゃんに同じことを聞いたよ、
 『アレは何だったんだ』って。
 じいちゃんは、
 『アレは、”モノ”だ。人が見ちゃいけないものだ。
 お前の友達はモノに連れて行かれたんだ。
 お前の匂いを覚えて、
 お前を追いかけてくると思った。
 そのときに撃ち殺そうと思っていたけど、
 山から降りてこなかった。
 きっと、お前の友達を喰って、
 満足したのだろうと思っていたが、
 その日から毎日毎日、
 いつ、モノが山からお前を攫いに来るか、
 気が気ではなかった。
 毎日、毎日、念仏を唱えて、仏様におすがりしておった』
 と。
 その話が本当なら、じいちゃんは50年近く、
 俺のために念仏を唱えてくれていたみたいだった」
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