第7章 よくも
「その話を聞いて、私はピンときました。
この高校生というのは、少し前まで兄の店でバイトをしていたのです。
私は自分の考えを確かめるべく、M実やK子、T夫に会いました。
彼らはすぐに白状しました。友達をひどいカタチで捨てた店長に仕返しを考えたと。
つまりは彼らだったんです。幽霊話をでっち上げたのは。自分らが夜シフトに入ったとき、幽霊を見たと騒ぎ立てたということでした。最初はホンの出来心だったのだろうと思います。兄が困ればいいと。
しかし、兄が夜シフトに入るということで、そのイタズラもできなくなりました。
事態はそれで終わるはずだったのです。」
「しかし、その後、兄は妙に怯え始めました。
たまにしか話さなかったのですが、何度か『店で夜、女の声が聞こえる』とか、『なんで、なんでって言うんだ・・・』とつぶやいていました。
そのことも当然M実たちに聞きましたが、全員が知らないと言いました。そして、自分たちは聞いていない、と。」
「兄は今、入院しています。
重度のうつ病です。ほとんど話すことはないのですが、たまに妙に怯えて私に夜通しそばにいるように懇願してくることがあります。
『あいつがくる、あいつが・・・』とその時は言います。」
「私は、兄が良心の呵責から幻覚を見るようになったのだと思っていました。でも、変な話ですが、兄にも人の心があったのかと、安心したところもありました。」
でも、と彼女は続けた。
「一度だけ、特別に許可を得て、病院で兄に付き添って一夜を過ごしたことがあります。
そのときに、私にも聞こえたのです。」
え?何が?
そう私が尋ねると、彼女はひとつ息をついて、言った。
「『よくも』・・・って言う、女性の声でした」
店長は未だに社会復帰を果たしていないそうである。