第5章 魅力/日常微糖
会話しながら思考している話
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少し汗ばむくらいの良く晴れた日の朝。
想像以上に道が混んでいたせいでバスが遅れ、駅に着いたのがギリギリだった。
繭はスマホで時間を確認し、すぐ隣の駅のホームを鋭い目で覗いた。狙っている電車まであと1分しかない。間に合わない可能性は濃厚だ。
朝の駅は通勤や通学で人も多く、思うように進めないものだ。ちょうど反対線路に電車が止まったタイミングだと人が一気に増えて最悪である。目の前でゆっくりバス料金の支払いをする老婆には正直少し苛ついた。
仕方なく次の電車を狙う選択を取るか。ただ、それだと遅刻に足がかかるため降りた先で走る必要がある。気温が高めの今朝は勘弁願いたいが、遅刻をするとそれもそれで面倒だ。
バスを降りた所で、駅に小走りで向かった。改札内の電光掲示板には電車が来る文言とアナウンスが流れ、電車が来る気配がすぐそこだ。もう一度スマホを見れば定刻、電車がホームに近づく音がするので、さすがに諦めの念が濃くなった。
ダメ元でワンチャンいけるかもわからない運にかけるか、最悪のパターンなら今から走って目の前で電車を逃し 疲労と喪失感が残るパターンか。走る元気があれば次の電車に乗り学校最寄りの駅から走るか、いっそうのこと遅刻覚悟で諦めるか。
決めきれないが流れのままに定期を取り出そうとすると、すぐ横を真っ直ぐ凛が通り過ぎた。
「え、今の乗るの?」
「間に合う」
振り返りもしないまま改札を最短で通り、早足で階段までを一気に進む。追いかけることもかなわないほど歩幅がまるで違うから、繭の方はここで猛ダッシュを強いられることになる。
ブレない背中は前しか見ていない。その行動の早さには、何とも言えない違和感がある。
「…………っ」
ギリギリで乗り込んだ電車内は涼しく快適だった。繭の口から出るのは安堵の溜息だ。凛は一直線に比較的人の少ない場所に立ち、繭もその隣に立った。