第2章 【直哉×甚爾元カノ】
その態度には溜息をつきながら茶を淹れた。
「また自分は、そんな安っぽいお茶淹れて。……俺が来たんやから、もっとマシなもん出せへんのか」
直哉は運ばれてきた湯呑みを一瞥すると、さも不満げに鼻を鳴らした。口では毒を吐きながらも、が差し出した安価な茶菓子には律儀に手を伸ばす。
その姿は、当主候補としての傲慢な仮面の裏に、年相応の幼さを透けさせていた。
「あら、ごめんなさいね。ここには、貴方の屋敷にあるような高級な玉露なんてないのよ。嫌なら、そのままお帰りになって」
は、直哉の鋭い視線を受け流すように、穏やかな手つきで自分の分のお茶を啜った。
「帰れ? 自分、誰に向かって口利いとるんや。俺がその気になれば、こんな家ごと買い取って更地にするなんて造作もないんやぞ」
「はいはい。凄いお力ですね、直哉くん。でも、更地にする前に、まずはその脱ぎ捨てた上着を自分で畳んだらどうかしら?」
が視線で示した先には、直哉がソファに放り投げた仕立ての良い羽織にあった。
一事が万事これだ。直哉はここに来るたび、王様のように振る舞い、を「甚爾の残飯」だの「三十路の行き遅れ」だのと罵倒する。
けれど、そうやって吠えれば吠えるほど、の目には、彼が自分の気を引こうと必死になっている子供のようにしか映らなかった。
「……自分、ほんまに可愛げないな。そんなんやから、あの人にも捨てられたんちゃうか」
その言葉は、直哉なりの精一杯の攻撃だった。
けれど、は傷ついた素振りも見せず、ただふふっと小さく笑った。