第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
* 凪side
五月の終わり。窓際を通るたび、白いカーテンがわずかに揺れて、やさしい陽射しが差し込んでいる。穏やかな時間、消毒液の匂い、遠くで鳴るナースコール、いつの間にか病棟の勤務もすっかり慣れていた。
「検査が終わったら、お母さんが来てくれてるって言ってたよ。よかったね」
そう声をかけると、車椅子の患児は小さくうなずいた。手に持っているのはルミリオンのぬいぐるみ。彼とルミリオンはいつも一緒で、長い入院生活の中でヒーローの存在が支えになっていることが、頼もしくもあって少し切ない。
外来の前の検査室。待合室は診察待ちの患者と家族でスペースは埋まり、子供向けのテレビ番組が賑やかに流れている。検査室に送り届けた後は、また呼び出されるまでは待機。邪魔にならないように裏口に周り日当たりのいいベンチに腰を下ろす。いつからだろうか、こうやって無意識に身を隠すようになったのは。
「凪か?」
ふいに名前を呼ばれて、視線を上げた。
「轟君…?」
ヒーロースーツのままで手にはラッピングの施された大きな袋を持っていた。ヒーローは特別に裏口から入る許可があるから、不思議ではないけど、轟君のことだ誰かの面会だろう。
「今日は面会?」
「ああ。先月の強盗事件に巻き込まれた子供の見舞いだ」
「先月…」
確か隣の街で起こった強盗事件。子供やお年寄りが人質になってリアルタイムで緊迫した状況が流れていた。画面越しで見たヒーローはショートとデクだったのを覚えている。私だって本当なら現場で待機していた身だった。でもあの時はもう…。