第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
「……ンじゃあ…、彼氏とか?」
「随分いないなぁ。不規則な仕事してるし、危ない目にも遭うし、生活も不規則。私と付き合うメリットないからね。爆豪君は?ってこんなことヒーローに聞いちゃいけないよね」
「いたらンなことで飯食うかよ」
「そっか。それもそうだね」
タイミングよく店員さんがトレイを持って、静かにテーブルまで歩いてきた。トレイの上には、湯気の立つホットチョコレートとコーヒーに、シナモンロール、カルモダンロール、ムンッキが一つのお皿に仲良く並んでいる。テーブルに置かれた瞬間、甘く香ばしい香りがふわりと漂い、口元が緩む。
「ああ、いい香り。甘いのって癒されるよね」
「俺ァ辛党だから分かんねぇ」
「あ、私ね、甘いのも好きだけど、結構辛いのもいけるんだ」
「あ?俺と勝負してぇンか?」
「違うよ、そんな勝負だなんて…。ただ激辛料理も結構好きって話だから」
「じゃあ次、激辛料理だな」
「…え?」
「店、見つけとく」
「本当に?」
凪が俺に宣戦布告したんだからな。俺も負けるつもりはねぇ」
「待って待って。激辛料理は嬉しいけど」
「嬉しいなら待ってろ。…また、迎えに行く」
ぶっきらぼうな誘いに半信半疑だったけど、思わず口元が緩んでしまい、頬がじんわり熱くなるのを感じた。シナモンロールの味もこの場所の雰囲気も、勝己の穏やかな表情も声色も全部、多分一生忘れない。
そしてこの日から少しずつ距離が近くなった。事故現場で顔を合わせることも今まで通りだったけど、現場が落ち着いた後は声をかけてくれたり、ご飯に行ったり、そんな関係が続いていた。関係が変わったのはそれから一ヶ月後だった。