第3章 轟焦凍のHERO童貞理論
「ごめん…、俺」
「謝らないで、そうじゃないから。……私ね、我慢できなくなっちゃって、涙も、出てきちゃって。急に頭真っ白になって…」
「でも、無理させたよな」
「違うの。………気持ち、よかったんだと思う」
涙の跡を残したまま、笑みがこぼれる表情に緊張も緩んで胸の奥がふわりとほどけていくのを感じた。
「よかった」
「言っとくけど焦凍は優しすぎなんだからね?こんなの絶対泣いちゃうよ」
「悪い。泣かせるつもりはなかった」
「知ってるよ。でもね、愛されてるのが苦しいくらいに伝わってきてそれが嬉しかったの」
壊したくない、不安にさせたくない、そうやって作ってしまっていた壁がなくなって〝ただ大切にしたかった〟その想いは凪に届いた。思わず口元が緩みそうになって、気付かれないように言葉の代わりに腕を回す。凪の匂い、落ち着いた息遣い、その全てが穏やかに愛おしく感じさせる。今はこれ以上はもう望まなくてもいい、そう思えたのに、凪の好奇心は違っていた。
「ねぇ焦凍。ここで終わらないよね?」
「……本気か?」
「だって痛いとか全然なかったもん。次って、やっぱ指?かな?」
「凪は平気なのか?」
「うん。もう落ち着いついた。でもさっきさ、途中ですごく抑えてたでしょ?」
「俺もまだ分かんねぇことばっかだから」
「次はさ、ダメとかやだって言っちゃっても止めなくていいからね」
「それは難しいな。言葉は一番抑制がかかる」
「大丈夫だから。泣いちゃうのだって悲しいとか痛いとかじゃないもん。感情が溢れちゃうだけ」
「いいのか?」
「うん。もう一歩、いこう?」
「強いな、凪は…」
「違うよ、強くなんかない。ただ、焦凍が好きだからだよ」
くしゃっと小さく笑う仕草と無邪気さと甘さに胸の奥がぎゅっと締め付けられた。胸の高鳴りは止められず、思わず手を伸ばして抱き寄せ、言葉にできない想いを誤魔化すように腕を回す。身体だけじゃなくお互いの距離がまた近づいた気がした。