第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
「実感はまだねぇけど、心臓はしっかり動いてた」
「まさか心拍まで確認できるなんて思わなかったから、ちょっと感動しちゃった」
「体調は悪かったのか?」
「今、思えばやたら眠かったかもしれない。気持ち悪いかもって思ったのは昨日あたりからなんだけどね」
そう言いながら、凪は自分の腹部にそっと手を当てた。柔らかく笑みを浮かべる横顔とその仕草に目が離せなくなる。
「……俺も触ってもいいか?」
「私もまだ実感ないから、……少し恥ずかしいけど」
凪の手に重ねるようにそっと触れる。まだ、膨らみのないお腹。それでも手に伝わる凪の温もりがどうしようもなく愛おしかった。
「ここにいるんだな」
「ね、不思議…」
「……俺が、父親か」
自然とそんな言葉がこぼれていた。気づけばそのまま凪の体を引き寄せていた
今、この腕に抱きしめているのが凪だけじゃないということが、やけに現実的だった。
「まずは挨拶からだな」
「そうだね。忙しくなりそうだね」
「凪はまだ無理できねぇだろ?次の休みに、俺だけでも会いに行く。……凪の両親に」
「でも…」
「体調が安定したら、そのとき一緒に行けばいい」
「焦凍の方は大丈夫なの?」
「姉ちゃんには、あんないい子は絶対逃すなって、会うたびに言われてる。子供ができたって言ったら、一番喜びそうだな」
「ご両親も?」
「ああ。まだ結婚してねぇから、責任を取れとは言われるだろうけど……俺は、ずっとそのつもりだった」
凪への想いを確信したあの日から、ただそばで守りたいと、それだけを考えてきた。今も、その気持ちは揺らいでいない。
「凪……」
名前を呼ぶだけで、うまく言葉にできない感情が胸に溢れてくる。
「……まだ実感はねぇけど」
それでも、もう迷いはなかった。
「お腹の子供と、一緒に生きてほしい」
〝……結婚、しよう〟
それは、やっと伝えることができた想いだった。
夕日に二人の影が静かに重なる。
バルコニーのブルースターは、また花をつけ、静かに揺れていた。
fin.