第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
* 爆豪side
あれから一年が経った。季節は何度も巡ったはずなのに、その時間をゆっくりと噛み締める余裕もないまま、相変わらず多忙な毎日を過ごしていた。
家に帰れば1日の報告を嬉しそうに話して、手料理を運ぶその左手の薬指には揃いの指輪が光る。隣で眠る穏やかな寝息、微かに残るシャンプーの匂い、名前を呼ぶ声…。
ただ守りたい、そして、何よりも手放したくない時間だった。
「かっちゃん家、何度来ても相変わらず広いね」
スーツ姿の落ち着かない様子の出久が、リビングの三人掛けのソファの一番端で、背筋を伸ばしたまま腰掛けている。気を遣う素振りは見せつつも、視線は部屋のあちこちを行き来していた。
「いい加減慣れろや」
「広いのもそうだけど、ほら、新婚さんのお宅だし」
「もう一年経っとる。新婚じゃねぇ」
「いや、でも僕には眩しすぎるというか…。かっちゃんが一人暮らしの時って、部屋に無駄なものとかなかったでしょ?でも、今はさ、多肉植物とか、かすみ草のドライフラワーとかそういうの飾ってるし、玄関にも可愛い小物があったし…。お邪魔するたびにこっちは緊張してるんだから」
来て早々にベラベラと喋る出久にため息が出る。
「呆れるくれぇによく見てんな…」
「見るよ。……今後の参考に…したいし」
「言ってるわりには、テメェんとこはなんの進歩もねぇみたいだけどな」
「そんなことないよ!今後、りょ、旅行の計画を…」
「……ほう。だったら詳しく聞かせろや」
にやりと口元を歪めると、出久の肩がびくっと反応する。言葉を探すように視線が泳ぐ。
「僕のことはいいから。そんなことより、今日は何か相談があったんでしょ?凪さんは?」
「今は、寝室で寝とる」
「まだお昼過ぎだけど…。どうかしたの?」
「昨夜、あんま眠れなかったみてぇで…。出久が来ンの待っとったけど、ソファでうとうとしてたから寝かせた」
「そうだったんだ。具合でも悪いのかと思った」
「まぁ…、良くはねぇな」
その曖昧な言い方に、出久の表情がぴたりと止まる。