第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
「凪…」
顔を上げると視界は焦凍で塞がった。唇に感じる柔らかな感触と抱き寄せられて密着する体。少し背伸びをして焦凍の肩に腕を回してキスに応える。コーヒーの味がリアルで、唾液が混ざり合うような口づけは昨日の夜みたいに深く絡む。
焦凍の視線が和室へと一瞬移り、理解よりも先に心臓が跳ねる。
その瞬間、焦凍のスマホが震え、着信音が静かなリビングに響いた。画面にはヒーローの名前が表示されている。焦凍の表情が一変し、私から少しだけ身を引いて画面を覗き込む。
「……悪い。多分、呼び出しだ」
「うん。通話に出て」
オフの日にかかってくるくらいだ。きっと何かあったのだろう。焦凍の険しい表情に緊張感が走る。
「分かった、すぐに行く…」
短い通話の後、そう言い終わるとスマホをポケットにしまった。焦凍は申し訳なさそうに私を見て、抱き寄せてうなじに口付ける。
「悪い。新人ヒーローからのヘルプだ。…行ってくる」
声に迷いはなかった。オフの日の穏やかだった空気が一瞬で引き締まる。私はそっと頭を焦凍の肩に寄せ、静かに頷く。
「行ってあげて」
「すぐに帰ってくる」
「うん…。気をつけて」
離れたくない、なんて言えない代わりに、抱きしめた腕に力を込めて、そっと放す。手のひらに残る温もりが、少し切なく胸を締めつけた。
「……帰ったら、さっきの続きがしてぇ」
そんな焦凍の本音に、思わず頬が緩む。自然と笑みがこぼれ、心の奥まで温かくなる。
「…散歩も行こうね」
「ああ。約束する」
軽く肩を寄せ合いながら見つめ合う瞬間、日常の穏やかさと二人だけの特別な時間が重なった。
焦凍を見送った後、一人バルコニーに出る。お日様は随分昇っていて、その眩しさに目を思わず細めた。秋の澄んだ空気が切なさを運ぶ。
あなたは、ずっと変わらないでいてほしい。
そんな想いをブルースターの花を揺らした風に託して…。
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