第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
* 爆豪side
見上げた空は、やけに高かった。
雲ひとつない青空。秋特有の抜けるみたいな澄んだ色。温度の下がった風がビルの間を抜けていく。
「……チッ」
意味もなく舌打ちが漏れる。別に機嫌が悪いわけでもない。ただ、こういう空を見るとどうにも落ち着かなくなる。
季節が変わる。それだけのことなのに、胸の奥に残ってる凪の存在だけはいつまでも変わらない。
ポケットに手を突っ込んだまま、信号待ちの交差点に立って、目の前のビルを見上げた。
「相変わらず、でけぇビルだな」
そんな独り言もビルの風にかき消されていく。重い足を一歩前に出した。
「おー、爆豪!」
「ひっさしぶりぃ」
聞き慣れた声に振り向くと、切島と上鳴が事務所の方から歩いてくる。
「揃いも揃ってうるせぇ…」
「なんだよぉ。久しぶりに会ったのに、つれないなぁ。かっちゃん」
そう言いながら、上鳴が肩に腕を回してくる。俺はそれを無言で払いのけた。
「うぜぇ」
「いいだろ。久しぶりなんだしさぁ」
「俺らは午前中に轟んとこで打ち合わせ。お前も昼から行くんだろ?」
「………ああ」
それ以上に言葉が続かなかった。轟の名前を聞けば、どうしても凪の存在がチラついてしまう。
「なぁ、爆豪。……大丈夫か?」
沈黙の中、そう切り出したのは切島だった。
「…彼女と、別れたって?」
「あ、いや、なんかさ、ほら、あの子、凪ちゃん。最近、見かけなかったし、爆豪からもなんも聞かないし、それで気になってて」
「個人のことだし、俺も上鳴も詮索する気はなかったんだけどよ。この前緑谷に会った時、そういう話になって。あいつ、すげぇ言葉濁してて……。その態度で察したっていうか…」
「あのクソがっ」
「いや緑谷は悪くねぇ…。俺らが勝手に聞いただけだからよ」
しばらく誰も口を開かなかった。ビルの隙間を抜ける風の音だけが、やけに耳につく。