第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
* 凪side
夕食が終わり、先にシャワーも済ませた。髪を乾かしながら、いつもとは違う香りの自分の髪に気づく。冬美さんが買ってくれていたワンピースの部屋着を身につけると、まるで別の自分になったような気がした。
リビングに戻ると、轟君は書類を一箇所にまとめ、〝報告書〟と書かれたファイルへ丁寧に差し込んでいる。空調の風が火照った体を心地よく冷ましてくれる。
「終わったの?」
「いや、終わらねぇ…。なんなら終わる気配もねぇ」
「そんなにあるの?」
「面倒だからって何年も溜めてた俺が悪い。…」
「こなしてきた任務とか事件がそれだけ多かったんだよね、きっと…。私でよければ何か手伝えることがあったら言ってね」
「ああ…。その時は頼む」
柔らかな笑みにつられるように、私の頬もゆるむ。同じ温度で同じ時間を過ごしているような、そんな優しい感覚。
「凪、…手は?」
「え?」
「まだ処置が要るだろ?」
「うん。消毒してガーゼで保護するけど、それくらい自分でできるよ?」
「俺がする。そこ、座って」
促されるまま椅子に座り、片付けられた机の上には病院から処方された防水テープとガーゼが並ぶ。轟君は私の左手をそっと自分の掌に乗せると、少しだけ真剣な表情で見つめた。
「まだ痛むか?」
「ううん、全然。手の甲だから動かすのにも支障はないし大丈夫だよ」
「痛かったら言ってくれ」
そう言いながらアルコール綿で優しく傷口に触れる。気遣うように触れてくれる仕草に、〝ごめんね〟と言葉が浮かぶ。でも、ここで私が謝っても、轟君の罪悪感を揺らしてしまうだけ。だから、その言葉を飲み込む。
「器用だね」
「傷の処置は慣れてる」
「…そっか、そうだよね」
だって轟君はヒーローだもん。そして、あの時の私にとってもヒーローだった。〝守りたい〟と言ってくれた言葉は私だけじゃなくて、きっと勝己との関係も全部見据えて、言ってくれた言葉だと思う。